2026/10/04 15:45
キッチンの棚にあるターメリック。カレー粉の黄色のもと、くらいの認識で止まってる人、多いと思う。自分もそうだった。去年、スパイス専門店で「オーストラリア産」と書かれた瓶を見つけて、1,800円。インド産の3倍以上の値札に、理由が気になって調べ始めた。
その流れで分かったことを、成分と産地の2軸でまとめておく。
ターメリックとウコンは同じもの
植物学的にはショウガ科ウコン属のCurcuma longa。根茎を茹でて乾燥させ、粉にしたのがあの黄色い粉末だ。日本では「ウコン」、英語圏では「turmeric」。呼び方が違うだけで同じ植物。沖縄の春ウコン・紫ウコンは別種なので、ここでは触れない。
秋ウコン=ターメリック、と覚えておけばだいたい間違わない。
黄色のもとと、香りのもと
あの濃い黄色はクルクミノイドという色素群。中身は3つに分かれていて、クルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミンという名前がついている。NIH/PMCに載っていたサプリ製品の分析研究だと、製品間でクルクミノイド含量にかなり幅があった。品種、育った土地、収穫時期で変わる。
香りの正体は別で、精油成分のほう。ar-ターメロン、α・β-ターメロン、ジンギベレンといったセスキテルペン類が中心。カレーを作ってると立ちのぼる、あの独特の土っぽい香りはこの精油由来。
栄養面では炭水化物と食物繊維が主体で、鉄・マンガン・カリウムといったミネラルも含む。USDA FoodData Centralのデータベースを見ると、粉末100g中のマンガンがかなり多い。ただし、普段使うのは小さじ1杯(2〜3g)なので、ミネラル源として期待するより、香辛料として楽しむ食材と捉えたほうが現実的。
世界のターメリックの8割はインドから来ている
生産量・消費量・輸出量、すべてインドが世界一。カレー文化圏なので当然といえば当然で、モンスーン気候の湿潤な土壌がウコン属の栽培に合っている。日本のスーパーに並んでいるターメリック粉末も、原産国を見るとほぼインド産だ。
そんな中で、ここ10年くらいでじわじわ出てきたのがオーストラリア産。
クイーンズランドとリバーランドで何が起きているか
オーストラリアの商業栽培の中心は2つ。クイーンズランド州キンガロイ地域と、南オーストラリア州リバーランド地域。
キンガロイはもともとピーナッツで有名な農業地帯。ABC Newsが2016年に取り上げた記事では、スーパーフード需要の高まりに乗って、既存の農家がターメリック栽培に転換しはじめた様子が紹介されていた。
リバーランドのほうはもっと最近で、2024年のABC News記事に、乾燥地帯で灌漑を使って栽培する農家の事例が出てくる。この記事で目を引いたのが価格で、生鮮根茎(フレッシュな状態の根)が最大で約60豪ドル/kg、日本円にすると6,000円近い値がつく例があるという話だった。粉末ではなく生の根茎、しかも地元のオーガニック市場向けという限定条件はあるが、それでも高い。
インド産バルクが安価に流通する中で、オーストラリア産は「国内生産・少量・鮮度」をウリにしたニッチ市場で成り立っている、というのが実態に近い。
産地が違うと中身も違うのか
気になるのはそこだと思う。精油成分の品種間比較を扱ったPMCの研究を読むと、同じCurcuma longaでも栽培地の気候・土壌・収穫タイミングでクルクミノイド比率も精油組成も変動する、と書かれている。
ざっくり言うと、インドのモンスーン気候下で育ったものと、オーストラリアの比較的乾燥した環境で灌漑栽培されたものでは、成分プロファイルが揃うわけではない。ただ、どちらが優れているという単純な話でもなく、料理用途なら香りの好み、サプリ原料用途ならクルクミノイド含量の規格、と見るポイントが変わる。
自分がスパイス棚で手に取るなら、カレーに使うぶんにはインド産で十分だと思ってる。香りが立つし、価格もこなれている。オーストラリア産の生根茎が手に入る機会があれば、すりおろしてドレッシングやスムージーに入れてみたい、くらいの温度感。
選ぶときに見ておきたいこと
粉末を買うなら、原産国と、できれば収穫年が書いてあるもの。精油成分は時間とともに飛ぶので、開封後は半年〜1年で使い切るのが現実的なライン。瓶の中で黄色がくすんできたら、香りも落ちているサインだと思っていい。
生の根茎に出会えたら、皮ごと薄切りにして冷凍しておくと使いやすい。生姜と同じ扱いで問題ない。手が黄色くなるので、気になる人は手袋を。これは経験済みで、素手で扱った翌日、指先がしっかり染まっていた。
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