2026/09/10 08:34

菊芋を初めて買ったのは、たしか2022年の12月。近所の直売所で、生姜みたいなゴツゴツした塊が「キクイモ 200円」と書かれて並んでいた。芋と名乗っているのに芋じゃない、と店番のおばあちゃんに聞いて、家に帰ってから調べた。それ以来、冬になると冷蔵庫にだいたい入ってる。

調べれば調べるほど、菊芋は面白い。栄養素の構成が、いわゆる芋類とはまるで違うのだ。

そもそも菊芋は「芋」じゃない

菊芋(キクイモ)はキク科ヒマワリ属の多年草。学名はHelianthus tuberosusで、原産は北アメリカ北東部。ヒマワリの仲間。夏に黄色い花が咲く。地下にできる塊茎(かいけい)の部分を食べるので「芋」と呼ばれているが、植物学的にはジャガイモやサツマイモとは全然違うグループに属している。

この違いが、そのまま栄養素の違いに直結する。

ファイブポイントデトックス

デンプンがほとんどない、という珍しさ

じゃがいもを茹でて潰すとホクホクする。あれはデンプンの塊だからだ。ところが菊芋を茹でても、あのホクホク感はほぼ出ない。理由はシンプルで、菊芋はデンプンをほとんど蓄えないから。

じゃあ何を貯めているのか。イヌリンという水溶性の多糖類だ。生の菊芋には、目安として15%前後(文献によって13〜20%とばらつく)のイヌリンが含まれる。この割合が、他の根菜と比べて突出して多い。

イヌリンって結局なに

イヌリンは、ブドウ糖に果糖(フルクトース)が何十個も鎖のようにつながった構造をしている。β2-1結合という、ヒトの消化酵素では切れないつなぎ方をしているのがポイント。

つまり、食べても小腸ではほとんど吸収されない。そのまま大腸まで届く。大腸に住んでいる腸内細菌がこれを発酵させて、短鎖脂肪酸(酢酸・プロピオン酸・酪酸など)やフルクトオリゴ糖に変えることが報告されている。食物繊維の分類でいうと「水溶性食物繊維」に入る。

成分表で見る菊芋(塊茎・生 100gあたり)

日本食品標準成分表2020年版(八訂)に収載されている数字を並べる。

エネルギー 約35kcal、水分 約81.7g、炭水化物 約14.7g、食物繊維総量 約1.9g、カリウム 約610mg。

ここで注意したいのが食物繊維の欄。1.9gと書かれているけれど、イヌリンは分析法によって食物繊維に算入されたりされなかったりする。実際に含まれるイヌリン量(15%前後)と成分表の食物繊維量にギャップがあるのはこの分析法の都合で、これは食品成分表を読むときの落とし穴のひとつ。

カロリーは100gで約35kcal。じゃがいもが100gで約76kcalなので、半分以下。デンプンが少ないぶん、エネルギー密度は控えめだ。

カリウムの多さは根菜のなかでも上位

菊芋100gに約610mgのカリウム。これは根菜類のなかでは多い部類に入る。ちなみにじゃがいもは100gで約410mg、里芋で約640mgあたりなので、里芋と肩を並べる水準。

カリウムは日本人が不足しがちなミネラルとして厚生労働省の食事摂取基準でも触れられている栄養素で、菊芋を冬の常備野菜に組み込んでおくと、意外と摂れる。

白いのと紫っぽいのがある

スーパーや直売所で見かける菊芋には、皮が黄褐色の白色種と、皮が赤紫がかった紫色種(フランス菊芋と呼ばれることもある)がある。

紫色種にはアントシアニン系のポリフェノールが含まれる。うちの近所だと圧倒的に白色種が多くて、紫色種は年に一度見かけるかどうか。味の差は正直そこまで大きくないと感じているけれど、食卓に並べたときの見た目は違う。

旬は晩秋から冬

菊芋の旬は11月頃から翌年3月頃。寒冷地でも土のなかで越冬できるくらい丈夫な作物で、雪の下で保存されているものもある。逆に言うと、夏場は市場にほぼ出てこない。

私の場合、11月に直売所で見つけたらまず1kg買う。ゴツゴツした塊茎は皮が薄くて、洗って生でスライスすればサラダに、薄切りにして炒めれば少しシャキシャキした食感になる。生姜と間違えて味噌汁に大量投入した知人がいたが、味噌汁の菊芋も悪くなかったと聞いた。

栄養素の目線でまとめると

菊芋は、芋と名乗りながらデンプンをほぼ持たず、代わりにイヌリンという水溶性食物繊維を大量に貯める。カロリーは控えめで、カリウムも根菜のなかでは多め。旬は冬。品種は白と紫の2系統。

この「デンプン主体じゃない根菜」というポジションは、和食の食材のなかでもかなり珍しい。れんこんでもごぼうでもない、独自の立ち位置。冬の食卓に取り入れてみると、単純に食感と味わいの選択肢が増える。

もし直売所で見かけたら、まず1個だけ買って、薄切りにして生で食べてみるのがいい。シャリっとした歯ざわりと、ほんのりした甘み。ここから菊芋との付き合いが始まると思う。

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