2026/08/13 08:34
在宅勤務が始まって3年、私の1日の歩数は平均で1,800歩まで落ちた。以前は駅まで歩いて電車を乗り換えて、昼はオフィス近くの定食屋まで往復して、それだけで6,000歩は稼げていた。いま、朝起きてから寝るまで、家の中を移動するだけ。夕方になると腰が固まっていて、椅子から立ち上がる瞬間に「よっ」と声が出る。
同じような感覚を持つ人は多いはずだ。ここでは、座りっぱなしがなぜ体の重さにつながるのか、そして日々の生活で何を変えられるのかを整理する。
座位時間と健康の関係、日本人はどのくらい座っているのか
厚生労働省のe-ヘルスネットでは、座ったり寝転がったまま過ごす時間を「座位行動」と呼び、健康リスクの観点から注目している。シドニー大学の研究チームが20カ国を比較した調査では、日本人の平日の座位時間は1日420分。世界で最も長かった。テレワーク中心の生活だと、これがさらに延びる。
座位時間が長いほど、循環器疾患や2型糖尿病、総死亡リスクが上がることが複数の疫学研究で報告されている。運動を別途している人でも、座り続ける時間が長ければリスクは残るというのがやっかいなところだ。「週末にジムに行ってるから大丈夫」では相殺しきれない。
体の重さ・だるさは、血流と筋活動の問題
長時間座り続けると、下半身の大きな筋肉が動かない。ふくらはぎの筋ポンプが働かず、静脈血が下に溜まる。むくみと重だるさの正体はここにある。極端な例だと、飛行機で長時間動かないと起きるエコノミークラス症候群と同じメカニズムだ。在宅勤務でずっと座り続けていて肺塞栓を起こした症例も報告されている。
肩こりや腰痛も似た構造。同じ姿勢を保つために、僧帽筋や腰の筋肉が微弱な収縮を続けている。血流が滞って、乳酸やその他の代謝物が抜けにくくなる。夕方になって「なんか重い」と感じるのは、これの積み重ね。
「1時間に1回立つ」の実感値
WHOやスポーツ庁が紹介している対策の中心は、シンプルに「座位を中断する」こと。30分から1時間に1回、数分でいいので立ち上がる。トイレでも、コップに水を注ぎに行くのでもいい。
私の場合、Apple Watchのスタンド通知を使って強制的に立たされている。最初はうっとうしかった。会議中に鳴ると無視するし、集中してる時ほど動きたくない。それでも1ヶ月続けたら、夕方の腰の張りが明らかに軽くなった。数字で測ったわけじゃないので「軽くなった気がする」レベルの話だが、続けたくなる程度には違いを感じている。
ポイントは、運動としてやろうとしないこと。「立って伸びをする」「窓を開けて外を見る」くらいでいい。ハードルを上げると続かない。
身体活動ガイド2023が示す目安
厚生労働省が2024年に公表した「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人は歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日60分以上、週23メッツ・時以上を推奨している。加えて、筋力トレーニングを週2〜3日。
60分と聞くと大変そうだが、まとめてやる必要はない。朝の散歩20分、昼の買い物往復15分、夕方に軽くスクワット、これで達成できる。テレワークで通勤ぶんの活動量が消えているなら、意識的に埋めるしかない。私は昼休みに近所を15分歩くだけで、そこそこ達成できるようになった。
環境を変えると、行動が変わる
意志の力に頼るのは限界がある。私が試して定着したのは、この3つ。
ひとつめは、水を大きなボトルではなく小さなグラスで飲むこと。すぐ空になるので、給水のために席を立つ回数が増える。ふたつめは、プリンターとゴミ箱を意図的に遠くに置く。三つ目は、電話やオンライン会議のうち、カメラオフでいいものは立って受ける。ノートPCを本棚の上に置いて、そこで話す。
スタンディングデスクを買う必要はない。私も検討して2万円のを注文しかけたが、既存の棚で十分だと気づいてキャンセルした。
食事と睡眠も、重さの一因
体の重さは、動かないことだけが理由じゃない。在宅だと食事が単調になりがちで、たんぱく質と野菜が減る人が多い。私自身、パスタと菓子パンで済ませる日が週2回はあった。
厚労省の健康日本21でも、生活習慣病予防の柱として食事・運動・睡眠の3つが挙げられている。どれかひとつを頑張るより、全部を6割の力で回すほうが結果的に続く。睡眠についても、座位時間が長い日ほど寝つきが悪くなる傾向を自分では感じる。日中に体を動かしていない日は、夜になっても脳だけが疲れて体が疲れていない状態になりやすい。
まずは、明日の朝の1回から
座りすぎのリスクを網羅的に知っても、生活は変わらない。私が言えるのは、明日の朝、仕事を始める前に3分だけ家の周りを歩いてみる、そのくらいから始めるのがちょうどいいということ。1週間続けて、何も変わらなければやめればいい。何かが軽くなった気がしたら、続ければいい。
体の変化は、たいてい後からじわっと来る。すぐに答え合わせしようとしないほうが、続く気がしている。
詳しくは ファイブポイントデトックス をご覧ください。

