2026/08/09 08:34
出産して3ヶ月、半年、あるいは1年経っても、なんとなく疲れが抜けない。夜間授乳で寝不足なのは当たり前として、それだけじゃない気がする——そういう相談をよく聞く。
もちろん睡眠や休息が一番なんだけど、食事の中身も一度見直してみる価値はある。特に鉄とビタミンB群。この2つは産後のママが不足しやすい代表格で、厚生労働省の「妊産婦のための食生活指針」でも触れられている栄養素だ。
なぜ産後は鉄が足りなくなりやすいのか
理由はシンプルで、出産のときに出血し、授乳でも母乳を通じて栄養が出ていくから。妊娠中から鉄の需要が高い状態が続いていて、産後もその負担が抜けない。
鉄は赤血球のヘモグロビンをつくる材料で、酸素を体のすみずみに運ぶ役割がある。ここが足りないと、酸素運搬がうまく回らず、疲れやすさやだるさにつながる、と厚労省のe-ヘルスネットでも説明されている。
日本人の食事摂取基準(2020年版)だと、月経のある成人女性で鉄の推奨量は約10.5mg/日。授乳婦にはさらに付加量が設定されている。1日10mg超えって、意識しないとなかなか届かない量なんですよね。
ヘム鉄と非ヘム鉄、食べ方が違う
食品の鉄には2種類ある。
ヘム鉄は動物性食品——赤身肉、レバー、あさり、かつお、まぐろなどに含まれる。吸収率が比較的高い。
非ヘム鉄は植物性食品と卵・乳製品——ほうれん草、小松菜、ひじき、大豆製品、卵など。こっちは単体だと吸収されにくい。
で、ここが実践のポイントなんだけど、非ヘム鉄はビタミンCや動物性たんぱく質と一緒に食べると吸収率が上がるとされている。ほうれん草のおひたしにレモンを絞る、小松菜と豚肉を炒める、みたいな組み合わせ。理屈を知っておくと献立を組みやすい。
逆に、食後すぐの緑茶やコーヒーはタンニンが鉄の吸収を邪魔するので、少し時間を空けるといい。授乳中はカフェインを控えている人も多いと思うけど、麦茶やほうじ茶(カフェイン控えめ)に置き換えるのもアリ。
ビタミンB群は8種類のチームで動く
ビタミンB群っていうと1つの栄養素みたいに聞こえるけど、実際はB1・B2・B6・B12・ナイアシン・パントテン酸・葉酸・ビオチンの8種類の総称。それぞれ役割が違うけど、まとめて摂るのが基本。
ざっくり分けるとこんな感じ。
B1(豚肉、玄米、豆類)は糖質をエネルギーに変える補酵素。ご飯やパンをよく食べる人ほど必要になる。
B2(レバー、卵、乳製品、納豆)は脂質・糖質・たんぱく質の代謝全般に関わる。
B6(かつお、まぐろ、鶏肉、バナナ)はアミノ酸代謝に関わるので、たんぱく質をしっかり摂る産後ママには相性がいい。
B12(魚介類、レバー、卵、乳製品)と葉酸(ほうれん草、ブロッコリー、枝豆、レバー)は赤血球の形成に関わる。鉄と一緒に意識したいペア。
B群は全部水溶性なので、体に貯めておけない。毎日こまめに、が原則。しかも加熱や水にさらす調理で失われやすい。ほうれん草を茹でて絞る、みたいな調理だと葉酸はかなり減っている。
忙しい産後の現実に合わせるなら
ここまで書いておいてなんだけど、産後にレバーを下処理して、非ヘム鉄と組み合わせて、B群も8種類バランスよく——なんて無理な日がほとんどだと思う。上の子がいたら余計に。
なので、うちで実際にすすめているのは以下のような妥協ラインです。
1. 朝は納豆卵かけご飯を基本形にする。納豆にB2と葉酸、卵にB12とたんぱく質、ご飯のエネルギーをB1に代謝してもらう組み合わせ。洗い物も少ない。
2. 味噌汁の具を「緑の葉物+豆腐」にする。小松菜、ほうれん草、モロヘイヤなどをストックしておいて、豆腐と一緒に汁ごと飲む。水溶性のB群と非ヘム鉄が汁に溶けても、汁ごと摂れば無駄がない。
3. 週1〜2回はかつお・まぐろのお刺身か、鶏レバー煮(市販の惣菜でOK)。鉄とB6、B12をまとめて。惣菜コーナーの鶏レバー煮、意外と使える。
4. 果物を1日1回。キウイ、みかん、いちごなどでビタミンC。非ヘム鉄と同じ食事内で摂れると理想。
完璧じゃなくていい。というか完璧を目指すと続かないので、7割入っていればOKくらいの気持ちで組むほうがいい。
食事で難しい日もあると割り切る
それでも、産後1ヶ月の里帰りが終わった直後や、上の子の発熱が続いた週、夜間授乳が特に厳しい時期は、まともな食事なんて無理な日もある。
そういうときは、鉄が入っているシリアルや、卵とチーズだけでもいい。何も食べないよりずっといい。あとは、産後の1ヶ月健診・3ヶ月健診で貧血の指摘を受けた場合は、自己判断で市販の鉄剤を続けるより、産婦人科で相談したほうが早いです。原因や必要量が人によって違うので。
疲れが長引いていて、食事だけじゃ追いつかない感覚があるなら、まず病院で血液検査。これが遠回りに見えて一番の近道だったりする。
おわりに
産後の疲れは「気合が足りない」でも「甘え」でもなくて、単純に体が消耗している時期だから起きていることが多い。鉄とビタミンB群という具体的な栄養素で考えると、対策のとっかかりが見えてきます。
今日の夜の味噌汁に小松菜を足す、明日の朝は納豆卵かけご飯にする——それくらいの小さい調整から始めてみてほしい。
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